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2018年4月30日月曜日

デジタル資本主義

『デジタル資本主義』を読了。最近読んだ本の中では一番の良書でした。



Amazonでkindle版を購入したのですが、kindle、ブックマークをつけた箇所やハイライトした箇所をあとから一覧でみることができてすごく便利ですね。。。
今後は可能な限りkindle版を買おうと思います。

本書は資本主義の変遷を下記のように位置づけ、デジタル資本主義が一義的には生産者余剰ではなく消費者余剰を増加させることを説明しています。また、消費者余剰はGDPに反映されないので、日本で起きている「賃金水準は低下傾向なのに、なぜ生活実感が向上しているのか」がわからなくなるといったピンボケ現象が起きるとも説明しています。
1. 商業資本主義
2. 産業資本主義
3. デジタル資本主義

その後、柄谷行人の「交換様式と社会構成体」モデル及び川田順造の「文化の三角推量」モデルを掛け合わせ、デジタル資本主義は社会をどのように変えていくのかが説明されています。

私は経済学に明るくないので、消費者余剰といった概念自体も知りませんでしたし、なんとくなく理解はしていたものの、フレームが提供されてより理解を深めた事項(デジタル時代における企業のビジネスモデル、(1)エコシステムの駆動者、(2)モジュールの製造者、(3)オムニチャネルビジネス、(4)サプライー)や、新しい概念(顧客をイノベーターにする(Customer as Innovators: CAI)を知り、新しい学びを得ることができました。

2018年4月18日水曜日

教養としてのテクノロジー

伊藤穰一氏の教養としてのテクノロジーを読了。
正直にいうと期待していたよりはあっさりとした内容でした。
テクノロジーと思想、社会の関わり合いについてのするどい考察や批評期待していましたが、割と巷で議論されているレベル、深さくらいの内容がほとんどです。新書サイズなので仕方はないかと思いますが、内容は多岐に渡らなくても一つくらい、ザクッとした感じの考察を読みたかったですね。

2018年2月4日日曜日

『捨てられる銀行2 非産運用』

『捨てられる銀行2 非産運用』を読了。

フィデューシャリー・デューティーをキーワードに森信親金融庁長官が進める金融改革の概要をわかりやすく説明する良書であった。

特に第4章で、大恐慌下のアメリカが1930年以降に金融機関に対する行政方針を改めた点、と1970年以降に多額の「相場を読まない年金マネー」が市場に流れ込んだことにより、80年以降による年金制度改革によって、投資信託残高の増加を説明しているのが面白い。

2017年1月15日日曜日

荒屋真二『人工知能 概論(第2版)』

AIについて学ぶために、2014年に購入し飛ばし飛ばして読んでいた本書を本日読了いたしました。



Amazonのレビューでも指摘されていますが、まさに「概論」というタイトルにふさわしく、広く浅く人工知能に関する概念の説明が行われています。決して「入門書」ではないので、何かしらバックボーンとなる知識をもっていないと、本書に書かれている内容を「知る」ことはできても、「理解」するのは難しいかと思われます。

本書の内容をざっくりまとめると、「人口知能で問題を解決するにあたって、宣言的知識 declarative Knowledgeと手続的知識 procedural knowledgeをどのように実装するか(プログラミングするか)」になります。宣言的知識 declarative Knowledgeは、命題、知識、ルール、事実と言い換えてもいいでしょうし、手続的知識 procedural knowledgeは簡単に言うとアルゴリズムです。

宣言的知識 declarative Knowledgeに関しては、Prolog/Javaの知識が理解に役立ちます。

特に第4章でとりあげられている「意味ネットワーク semantic network」と「フレーム frame」ですが、is-a関係や、継承 inheritanceといったオブジェクト志向プログラミングの言葉が登場します。フレームframeに関しては、データ(field)だけでなく手続き(method) も持つことができると説明されており、オブジェクト志向のクラス概念そのものだと思います。時系列的に考えても、これらの人工知能の知識表現に関する研究の蓄積がオブジェクト志向に受け継がれていったんでしょうね。

立命館大学 稲葉教授のウェブサイトでも下記のように簡単に言及されていますが、オブジェクト指向が成り立つにあたって、知識表現の研究がどのように参照されたかを説明する本などあったら読んでみたいです。
人工知能における知識表現や問題解決の手法は、組織的活動を効率化するコンピュータシステムの開発やデータベース設計の前提となる「オブジェクト指向」と呼ばれる技術に受け継がれている。 
説明されているアルゴリズムに関しては、Prologに関連するパターンマッチングについては実感をもって理解できますが、その他についてはPythonで実際にコーディングしてみて、理解を深めたいと考えています。

2017年1月14日土曜日

米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』

米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』

FinTechについて考える上で、金融がそもそも持つ機能や歴史について勉強しなおしています。保険の勉強のために、積ん読状態であった、米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』を読みましたので、感想等をまとめたいと思います。2013年7月日付の買い物のレシートが挟まっていましたので、3年半前には購入していた本ですが、ようやく読了しました。



本書は、第1部リスク編と第2部保険編に分かれていまして、第1部では「リスク」について理論的な観点から説明が行われています。第2部では、前半は保険の価格(保険料の構成)を中心に理論的に説明が行われ、後半は江戸時代から戦中までの保険募集の広告や、保険証券等の史料を参照にしながら、保険及び保険会社がどのように日本で形成され、普及していったかが説明されています。

第1部 リスク編
ここで学びとなったのは、リスクを考える際に期待値(期待損失額)と期待値まわりの変動があり、保険が提供するのは「期待値の低減」ではなく、「期待値まわりの変動」を低減させることによって、リスクを軽減させるといったことです。
期待値はμ(ミュー)、変動については、分散(σ2 シグマの二乗)もしくは、標準偏差(σ)を用いて表現され、それぞれの概念については理解していましたが、保険がどちらのリスクを低減するのか、といったことは考えていませんでした。

第2部 保険編
公正保険料(Fair Premium)という概念をはじめて知りました。公正保険料とは、以下の4つの要素から成り立つもので、競争的な市場と整合的な保険料とのことです。
1. 期待保険金コスト(expected claims)を現在価値に割り引いたものを
2. 割引保険金コスト(discounted expected claim) として、
3. 資本コスト(profit loading)と、
4. 管理運営費(expense loading)が合計されたものが、公正保険料である

つまり、
Fair Premium = discounted expected claim + profit loading + expense loading
ですね。

公正保険料と実際の保険料

競争的な市場と整合的というのは、「完全な市場」であれば、公正保険料以外の価格は存在しえないということです。実際には、市場参加者間の情報の非対称性はありますし、完全な市場はありえず、我々消費者も「合理的な」判断を常に行えるわけではないので、公正保険料以外でプライシングされた保険も存在するわけですが、概念として理解しておくのは有益かと思います。

著者の高山氏がまえがきで「国際的な保険実務家の間では公正保険料は基礎的な共通概念だが、日本ではまだ十分に使いこなされている用語ではない」としています。

高山氏の指摘は正しいようで、Googleで「公正保険料」と検索し、ざっと結果をみてみても、「公正な保険料」といった言葉は使用されていますが、「公正保険料」という言葉は見つかりませんでした。本書は2008年に出版されていますが、9年経った今もまだ、一般的にはなっていないということでしょうか。

なお、保険会社で勤めている間に、生命保険講座全8科目を受験しましたが、記憶が確かなら「公正保険料」という言葉は、どのテキストにも存在していなかったように思われます。