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2017年5月4日木曜日

保険証券へのブロックチェーン技術適用

保険証券へのブロックチェーン技術適用に関する実証実験の完了
http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2017/042401.html

東京海上とNTTデータがブロックチェーン技術適用に関する実証実験を完了したとのこと。

実証実験の詳細は下記に記載されています。

「保険証券へのブロックチェーン技術適用に関する 実証実験の完了」 別紙
http://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2017/pdf/042401-01.pdf

PoCの詳細が記載されており、これからブロックチーェンのPoCを行っている会社は色々と参考になりそうです。

2017年2月5日日曜日

保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険会社とFinTechシリーズ、最後のポストです。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界のデジタル化の現状と取り組みを例に、保険会社のDigitalizationでAXAが取り上げられることが多いです。

以下、上記レポートでAXAについて言及されている箇所のポイントをまとめます。
  • AXAは、アメリカのバークシャーハサウェイに次いで世界2位の規模お有する、フランスの保険グループである。2014年の総収入は1,612億ドルを超え、顧客数は1億人を超える。
  • 近年はDigital Transformationを最優先の戦略課題として掲げており、2013年から2015年間の3年間で9.5億ユーロの投資を行っている。
  • 同社のデジタル化の取り組みの要の組織として、AXA Lab、AXA Strategic Ventured, Data Innovation Labがある。
  • AXA Labは2013年10月にデジタル文化の醸成、イノベーションを主導することを目的にシリコンバレーに設置された組織である。トップテクノロジー企業等との関係構築や、テクノロジーに関する新規事業、タレントの動向をつかむことをミッションとしている。
  • AXA Strategic Venturesは、保険および資産運用、金融技術、ヘルスケア事業における イノベーション企業への投資を行うことをミッションとするベンチャーキャピタルであり、AXA Labをオフィスを共有している。
  • Data Innovation Labは2014年にパリに設置されたビッグデータ分析を専門とするチームである。顧客サービスや商品開発等のサポートを行っており、Kaggleで自動車てレマティクスのデータを用いたアルゴリズム開発コンペの実施をした。
下記はAXA Lab設立の際のアナウンスメントメッセージです。

Frédéric Tardy, Chief Marketing & Distribution of AXA Group announces the creation of the AXA Lab


また、AXAがDisruptiveなinnovationに対し、どのように取り組んでいこうしているかを説明するメッセージムービーもあります。

AXA partners with startups to develop disruptive business models


日本の保険会社ではSOMPOホールディングスがSOMPO Labを立ち上げ、同様にシリコンバレーに拠点を作成しています。

今後、保険会社がどのようにDigital Transformation/Innovationを起こしていくか、楽しみです。

2017年1月26日木曜日

InsurTechとLemonade

森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏がInsurTechの本命として、アメリカのLemonade社を紹介しています。

InsurTechの本命、Lemonadeのビジネスモデル

Lemonadeのページをみてみたものの、増島氏が説明されているようにB-Corpが引き受主体となっているかどうかはわかりませんでした。Appをダウンロードするなどして、別途他の情報を確認すればわかるのかもしれないですね。

ただ私が調べてみる限り、B-Corpという会社が存在するのではなく、B Labという非営利組織が管理している「社会的企業」の認証制度のようです。そしてLemonadeはB-Corpとして、「社会的起業」認証されているようです。

B Cooperationのウェブサイト
https://www.bcorporation.net/

WiredではB Lab立ち上げの経緯が説明されています。

WHY BE "B"? B-Corpという挑戦
http://wired.jp/special/2017/b-corp/

Lemonadeのポイントとしては「予定していた損害率と実際の損害率に差があった場合に、その分のお金を契約者に還元しますよ」といったところでしょうか。

貯蓄性の保険において、予定と実際の事故(損害)率、事業費率、利率から生まれる3利源(危険差(死差)、費差、利差)をもとに契約者配当を行う会社はありますが、掛け捨ての損保系の保険で予定と実際の損害率を差をもとに、契約者配当を行っているのは聞いたことがないですね。

なお、事業費については下記のように20%とFixにしているようです。日本の大手損害保険会社が30%、ダイレクト系の損害保険会社でも事業費率は24,5%のところが多いことを考えると、低いコストで経営できるようになっているのでしょう。ただ、アメリカの損害保険会社の事業費率がどれくらいなのかわからないので、20%が「低い」のかどうか判断に困ります。
Q: How are you using my premium dollars?
Glad you asked! Lemonade keeps a fixed 20% fee. This pays for developing loads of cool tech, paying our team's salaries and hopefully making some profit!
The remaining 80%?
Job #1 is to ensure we can always pay claims
Job #2 is to Giveback money that isn’t needed for Job #1. 
保険に加入するにあたって電話での提供は行っておらず、WebとMobile appに絞っているのも、事業費を抑えられる一因でしょう。支払い方法についてもクレジットカードとデビットカードになっておりますし、不要なオペレーションが発生しにくいように仕組みが作られていると思います。
Q: Can I sign up by phone?
Lemonade will be available for signup only through our mobile apps and our website.
増島氏の説明では、保険の引受査定(Underwriting)を再保険会社にアウトソースしているようです。保険金の支払い(Claim)の損害調査は間違いなくアウトソースされているようですし、バリューチェーンにおいてLemonadeが担っているのは、商品開発、ディストリビューション、リスク引受と資産運用といったところでしょうか。

日本の保険会社のようにディスクロージャー誌がでるようでしたら、是非詳細にみてLemonadeのビジネスモデルを詳しく知りたいです。

*なお別途ポストしますが、増島氏がまとめられているFinTechに関するレポートが、FinTechの本質を理解するにあたって非常にわかりやすかったです。

東京海上によるブロックチェーン実証事業実施

東京海上がブロックチェーン活用の実証事業を実施するとのことです。Planetway社のavenue-crossという技術を使用し、実証事業を行うとのこと。

ブロックチェーン技術の活用領域拡大に向けた実証事業を開始
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/170124_001.pdf

Planetwayという会社、聞いたことがないのでウェブサイトなどで見てみると、2015年に日本人によってシリコンバレーに設立されたスタートアップのようです。

下記でavenue-crossの説明がされています。
http://pwlvc.com/jp/business/avenue.html

「15年間におよぶ電子政府国家エストニアの政府インフラを民間応用」とあるようにエストニアで使用されている技術を応用したもののようです。

Planetwayの取締役にエストニア経済通信省に勤めていたラウル・アリキヴィ氏がいますし、エストニア企業とPlanetwayのパートナーシップ発表においてもエストニア政府CIOのメッセージがありますから、エストニアとかなり強い関係を持っていることかと思います。

エストニア政府 CIO(最高情報責任者)ターヴィ・コトカ氏(Mr. Taavi Kotka)2015年11月13日 TAKT記者会見メッセージ
http://cortanavideo.top/index.php?a=watch/5sYah9QCmpo

avenue-crossの特徴として「beyond API」が挙げられているのですが、技術的にどんな点でAPIをbeyondしているのかを知りたいところです。

Planetwayは交通事故予防サービスのアイディアでスタートアップ育成プログラムで受賞などもしていますし、気になるスタートアップの一つです。

IBM® BlueHubの「Open Innovation Initiative For Automotive/Healthcare」で『Avenue-Cross』を活用したサービスプランが最優秀賞・審査員特別賞を受賞
http://pwlvc.com/jp/infomation/press_release/20161209_001.html

2017年1月14日土曜日

自動車自動運転と倫理

Wiredの「MITが描く「クルマ・人・街」の新しいエコシステム」というレポートを読み、「自動車自動運転と倫理」について考えてみました。

自動運転はFinTechか

倫理について触れる前に、まずは、自動運転がFinTechに含まれるのかを考えてみたいと思います。

私はFinTechの使用のされ方として、以下の二つが代表的なものと考えています。

1. 金融会社のイベノーションを促す技術
2. 金融会社に限らず、事業会社/消費者/社会にも便益をもたらす、従来の金融サービス(投資アドバイス、送金、決済、経理、財務等)に代わる/改善するテクノロジー

広義には1、2の両方がFinTechにあたり、狭義には2のみになるかと思います。私としては、FinTechという言葉で示すのは2に限った狭義の使い方が適切ではないかと思いますが、詳細はまた別の機会に考察したいと思います。

ですので、自動車保険を主力商品として扱う損害保険会社のことを考えると、自動運転は1の使い方には含まれるものの、FinTechというくくりで自動運転を語るのは、私としてはあまり適切ではないと考えが。が、デロイトの保険業界におけるFinTechの潮流でも、自動運転は取り上げられていますし、このブログで取り上げる次第です。

自動運転と倫理

さて、「自動運転と倫理」を考えるにいたったのは、Wiredの「MITが描く「クルマ・人・街」の新しいエコシステム:「WIRED Future Mobility Session」レポートのなかでの、ダニエル・ベレリ氏の発言を読んでです。該当の箇所を引用してみます。
そこで考えなければいけないのは、倫理的な問題です。例えばMITのほかのラボでは、自律走行車の倫理的なジレンマについて研究しています。自律走行車が人を轢きそうになったときに、それを避けるためには犬を轢かなければいけないという状況で、クルマにどちらを選択させるべきか。デザイナーだけではこうした倫理問題に回答を出すことはできません。しかしシナリオを提示して、人々に問題について考えてもらうべく伝えていかなければいけません。
なるほど、自動運転をプログラミングする際に、「犬か人か」どちらかを轢かなくてはいけない、という状況でどちらを選択すべきかは倫理的に考えなくはいけない問題ですね。人間が運転をするケースでは、その人個人の倫理的判断に基づけば、いいのですが「自動運転」させる場合は、何が「正しい運転」、「望ましい運転」かを人が決めアルゴリズムを組むわけで、そのアルゴリズムが社会一般の通念や倫理に反していてはいけないですよね。

取り上げられたケースの場合、人と犬であれば、まだ考えやすいかと思います。議論はあるものの「犬」を轢く方に選択するのが社会的通念に則ったものではないでしょうか。

それでは、人一人と人二人はどうでしょうか、この場合はプログラムではどちらかを明示的に選択せずに、ランダムに選ぶというのも、一つの倫理的な解決かもしれません。

それでは、末期ガンを宣告された人一人と、小学生二人はどうでしょうか。まもなく死ぬ人間一人と未来ある子供二人のケースです。

あくまで上記は例で、「正しいこと」をアルゴリズムとして組み込む際には、このようにどちらかを選択しがたい状況での倫理的問題を考えざるをえないですね。

米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』

米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』

FinTechについて考える上で、金融がそもそも持つ機能や歴史について勉強しなおしています。保険の勉強のために、積ん読状態であった、米山高生『物語で読み解く リスクと保険入門』を読みましたので、感想等をまとめたいと思います。2013年7月日付の買い物のレシートが挟まっていましたので、3年半前には購入していた本ですが、ようやく読了しました。



本書は、第1部リスク編と第2部保険編に分かれていまして、第1部では「リスク」について理論的な観点から説明が行われています。第2部では、前半は保険の価格(保険料の構成)を中心に理論的に説明が行われ、後半は江戸時代から戦中までの保険募集の広告や、保険証券等の史料を参照にしながら、保険及び保険会社がどのように日本で形成され、普及していったかが説明されています。

第1部 リスク編
ここで学びとなったのは、リスクを考える際に期待値(期待損失額)と期待値まわりの変動があり、保険が提供するのは「期待値の低減」ではなく、「期待値まわりの変動」を低減させることによって、リスクを軽減させるといったことです。
期待値はμ(ミュー)、変動については、分散(σ2 シグマの二乗)もしくは、標準偏差(σ)を用いて表現され、それぞれの概念については理解していましたが、保険がどちらのリスクを低減するのか、といったことは考えていませんでした。

第2部 保険編
公正保険料(Fair Premium)という概念をはじめて知りました。公正保険料とは、以下の4つの要素から成り立つもので、競争的な市場と整合的な保険料とのことです。
1. 期待保険金コスト(expected claims)を現在価値に割り引いたものを
2. 割引保険金コスト(discounted expected claim) として、
3. 資本コスト(profit loading)と、
4. 管理運営費(expense loading)が合計されたものが、公正保険料である

つまり、
Fair Premium = discounted expected claim + profit loading + expense loading
ですね。

公正保険料と実際の保険料

競争的な市場と整合的というのは、「完全な市場」であれば、公正保険料以外の価格は存在しえないということです。実際には、市場参加者間の情報の非対称性はありますし、完全な市場はありえず、我々消費者も「合理的な」判断を常に行えるわけではないので、公正保険料以外でプライシングされた保険も存在するわけですが、概念として理解しておくのは有益かと思います。

著者の高山氏がまえがきで「国際的な保険実務家の間では公正保険料は基礎的な共通概念だが、日本ではまだ十分に使いこなされている用語ではない」としています。

高山氏の指摘は正しいようで、Googleで「公正保険料」と検索し、ざっと結果をみてみても、「公正な保険料」といった言葉は使用されていますが、「公正保険料」という言葉は見つかりませんでした。本書は2008年に出版されていますが、9年経った今もまだ、一般的にはなっていないということでしょうか。

なお、保険会社で勤めている間に、生命保険講座全8科目を受験しましたが、記憶が確かなら「公正保険料」という言葉は、どのテキストにも存在していなかったように思われます。

2017年1月10日火曜日

金融庁 決済高度化官民推進会議

明日、金融庁で開催される「決済高度化官民推進会議」(第2回)を傍聴予定です。
先立って、第一回の資料等を閲覧してみました。

私が以前から注目していたのは、決済高度化に向けた 全銀協の取組みについてで言及されている「決済インフラにおけるXML文書への移行」です。

どの回か忘れてしまいましたが、金融庁で開催されていた「決済高度化に関するワーキンググループ」においても言及されていた内容で、既存の固定長の全銀フォーマットのファイルから、取引の内容によりファイルの長さ/形式を変更できるXML形式に送金指図ファイルを変更するというものです。

全銀フォーマットのファイルをご覧になったことがある方はわかるかと思いますが、1レコードのサイズが120byteと限られているたため、本ファイルには必要最低限の情報しか記載されていません。XML形式にすることにより、長さ/形式が可変になり、取引で必要な情報を自由に加えられるようになるため、そのデータファイルを使用し、「請求・支払・入金消込」といった業務の自動化、効率化が行えるといったことが、「決済高度化に関するワーキンググループ」で述べられていたかと思います。

保険会社での仕事では、保険料徴収や保険金支払のシステムも担当することが多く、関連する業務や、それら決済系のテクノロジーやインフラストラクチャーに興味があるので、XML形式を採用することによりインパクトや、業務改革・業務改善を考えるのは楽しいです。

保険会社の業務効率化としては、保険料徴収や保険金支払に関わる各種管理業務をXML形式のデータをソースとして、自動化できるといったところでしょうか。

また、情報系システムの使い方としては、保険料徴収や保険金支払の各トランザクションのデータを、今までは別の業務アプリケーションからのデータ出力や、別ツールでの分析等行っていたのも、XML形式のデータを唯一の形式にして分析のソースにするのが有効かと思います。

既存のアプリケーションからも分析用のデータは出力されているでしょうが、例えば複数アプリッケーションが存在する場合に、どのアプリケーションから出力されたデータを正とするか、といったことを考える際に「決済に用いるデータを正とする」というのが正しい方向かと思います。

保険商品、保険料支払方法、保険被保険者の属性、保険金支払に伴う付帯費用、などなど様々な情報をXML形式のデータに加えることによって、事業費が実際どれくらいかかるか、どのような顧客により事業費がかかっているのか、などデータが取得しやすくなるのではないでしょうか。

結果、現在では想定されていない項目でリスク細分型の保険が提供されるようになったら、保険会社・お客様にとってもベネフィットがあるのかなと思います。