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2017年2月5日日曜日

保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険会社とFinTechシリーズ、最後のポストです。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界のデジタル化の現状と取り組みを例に、保険会社のDigitalizationでAXAが取り上げられることが多いです。

以下、上記レポートでAXAについて言及されている箇所のポイントをまとめます。
  • AXAは、アメリカのバークシャーハサウェイに次いで世界2位の規模お有する、フランスの保険グループである。2014年の総収入は1,612億ドルを超え、顧客数は1億人を超える。
  • 近年はDigital Transformationを最優先の戦略課題として掲げており、2013年から2015年間の3年間で9.5億ユーロの投資を行っている。
  • 同社のデジタル化の取り組みの要の組織として、AXA Lab、AXA Strategic Ventured, Data Innovation Labがある。
  • AXA Labは2013年10月にデジタル文化の醸成、イノベーションを主導することを目的にシリコンバレーに設置された組織である。トップテクノロジー企業等との関係構築や、テクノロジーに関する新規事業、タレントの動向をつかむことをミッションとしている。
  • AXA Strategic Venturesは、保険および資産運用、金融技術、ヘルスケア事業における イノベーション企業への投資を行うことをミッションとするベンチャーキャピタルであり、AXA Labをオフィスを共有している。
  • Data Innovation Labは2014年にパリに設置されたビッグデータ分析を専門とするチームである。顧客サービスや商品開発等のサポートを行っており、Kaggleで自動車てレマティクスのデータを用いたアルゴリズム開発コンペの実施をした。
下記はAXA Lab設立の際のアナウンスメントメッセージです。

Frédéric Tardy, Chief Marketing & Distribution of AXA Group announces the creation of the AXA Lab


また、AXAがDisruptiveなinnovationに対し、どのように取り組んでいこうしているかを説明するメッセージムービーもあります。

AXA partners with startups to develop disruptive business models


日本の保険会社ではSOMPOホールディングスがSOMPO Labを立ち上げ、同様にシリコンバレーに拠点を作成しています。

今後、保険会社がどのようにDigital Transformation/Innovationを起こしていくか、楽しみです。

2017年2月1日水曜日

保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表

今回はダイレクト系損害保険会社の財務諸表をみていきます。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTechで取り上げたように、保険会社のイノベーションの度合いをコンバインドレシオから評価する方法があるあります。そこで損害保険会社の財務諸表をもとに比較を行っていこうと思うのですが、今回はダイレクト系損害保険傾斜に絞りました。

ダイレクト系にしぼった理由は、販売チャネルが通販、Webと限られていることから、比較がしやすいですし、また非ダイレクト系の損害保険会社と比べビジネスにおけるテクノロジーのインパクトが大きいからです。

さて、下記に2000年から2014年の元受正味保険料の推移のグラフが掲載されています。

ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較
http://www.sonpo-direct.com/uriage.html

老舗のアメリカンホームダイレクトの減収や、ソニー損保のひとり勝ちなどがグラフからもみてわかるかと思います。

さて、コンバインドレシオ等の経営指標については、各社のウェブサイトに掲載されているディスクロージャー誌より集計を行ってみました。
下記、主要ダイレクト系損害保険会社のコンバインドレシオ、正味事業費率の推移です。

2011年から2015年までの数字をみますと、ソニー損保とアクサ損保の2社のみがコンバインドレシオ100%を常に下回っており、また事業費率も常に30%以内に抑えています。先の「ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較」でも、この2社がランキングの1位、2位を占めており、それを裏付ける数字といえましょう。


コンバインドレシオ 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 89.00% 89.20% 84.90% 84.30% 84.80%
AXA損保 92.90% 88.30% 88.70% 85.50% 82.40%
チューリッヒ 113.70% 100.60% 102.60% 96.80% 112.60%
三井ダイレクト 98.80% 99.30% 97.00% 101.70% 100.90%
SBI損保 92.30% 103.20% 98.80% 100.40% 104.70%






正味事業費率 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 25.70% 26.00% 25.60% 26.70% 27.10%
AXA損保 24.10% 20.70% 21.90% 21.90% 24.10%
チューリッヒ 44.40% 37.50% 40.80% 40.90% 39.30%
三井ダイレクト 21.40% 20.70% 20.70% 22.80% 21.90%
SBI損保 44.00% 33.40% 26.40% 22.80% 18.60%

AXA損害保険はAXAグループの中の一社です。AXAグループは保険のイノベーションを語る際に、先進的な例として取り上げられることが多いのですが、次回「保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み」でその詳細をみていこうと思います。

なお、損害保険会社の財務諸表の見方に興味がある方は、日本損害保険協会の下記ページをご覧ください。

損害保険会社のディスクロージャー かんたんガイド

2017年1月26日木曜日

InsurTechとLemonade

森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏がInsurTechの本命として、アメリカのLemonade社を紹介しています。

InsurTechの本命、Lemonadeのビジネスモデル

Lemonadeのページをみてみたものの、増島氏が説明されているようにB-Corpが引き受主体となっているかどうかはわかりませんでした。Appをダウンロードするなどして、別途他の情報を確認すればわかるのかもしれないですね。

ただ私が調べてみる限り、B-Corpという会社が存在するのではなく、B Labという非営利組織が管理している「社会的企業」の認証制度のようです。そしてLemonadeはB-Corpとして、「社会的起業」認証されているようです。

B Cooperationのウェブサイト
https://www.bcorporation.net/

WiredではB Lab立ち上げの経緯が説明されています。

WHY BE "B"? B-Corpという挑戦
http://wired.jp/special/2017/b-corp/

Lemonadeのポイントとしては「予定していた損害率と実際の損害率に差があった場合に、その分のお金を契約者に還元しますよ」といったところでしょうか。

貯蓄性の保険において、予定と実際の事故(損害)率、事業費率、利率から生まれる3利源(危険差(死差)、費差、利差)をもとに契約者配当を行う会社はありますが、掛け捨ての損保系の保険で予定と実際の損害率を差をもとに、契約者配当を行っているのは聞いたことがないですね。

なお、事業費については下記のように20%とFixにしているようです。日本の大手損害保険会社が30%、ダイレクト系の損害保険会社でも事業費率は24,5%のところが多いことを考えると、低いコストで経営できるようになっているのでしょう。ただ、アメリカの損害保険会社の事業費率がどれくらいなのかわからないので、20%が「低い」のかどうか判断に困ります。
Q: How are you using my premium dollars?
Glad you asked! Lemonade keeps a fixed 20% fee. This pays for developing loads of cool tech, paying our team's salaries and hopefully making some profit!
The remaining 80%?
Job #1 is to ensure we can always pay claims
Job #2 is to Giveback money that isn’t needed for Job #1. 
保険に加入するにあたって電話での提供は行っておらず、WebとMobile appに絞っているのも、事業費を抑えられる一因でしょう。支払い方法についてもクレジットカードとデビットカードになっておりますし、不要なオペレーションが発生しにくいように仕組みが作られていると思います。
Q: Can I sign up by phone?
Lemonade will be available for signup only through our mobile apps and our website.
増島氏の説明では、保険の引受査定(Underwriting)を再保険会社にアウトソースしているようです。保険金の支払い(Claim)の損害調査は間違いなくアウトソースされているようですし、バリューチェーンにおいてLemonadeが担っているのは、商品開発、ディストリビューション、リスク引受と資産運用といったところでしょうか。

日本の保険会社のようにディスクロージャー誌がでるようでしたら、是非詳細にみてLemonadeのビジネスモデルを詳しく知りたいです。

*なお別途ポストしますが、増島氏がまとめられているFinTechに関するレポートが、FinTechの本質を理解するにあたって非常にわかりやすかったです。

東京海上によるブロックチェーン実証事業実施

東京海上がブロックチェーン活用の実証事業を実施するとのことです。Planetway社のavenue-crossという技術を使用し、実証事業を行うとのこと。

ブロックチェーン技術の活用領域拡大に向けた実証事業を開始
http://www.tokiomarine-nichido.co.jp/company/release/pdf/170124_001.pdf

Planetwayという会社、聞いたことがないのでウェブサイトなどで見てみると、2015年に日本人によってシリコンバレーに設立されたスタートアップのようです。

下記でavenue-crossの説明がされています。
http://pwlvc.com/jp/business/avenue.html

「15年間におよぶ電子政府国家エストニアの政府インフラを民間応用」とあるようにエストニアで使用されている技術を応用したもののようです。

Planetwayの取締役にエストニア経済通信省に勤めていたラウル・アリキヴィ氏がいますし、エストニア企業とPlanetwayのパートナーシップ発表においてもエストニア政府CIOのメッセージがありますから、エストニアとかなり強い関係を持っていることかと思います。

エストニア政府 CIO(最高情報責任者)ターヴィ・コトカ氏(Mr. Taavi Kotka)2015年11月13日 TAKT記者会見メッセージ
http://cortanavideo.top/index.php?a=watch/5sYah9QCmpo

avenue-crossの特徴として「beyond API」が挙げられているのですが、技術的にどんな点でAPIをbeyondしているのかを知りたいところです。

Planetwayは交通事故予防サービスのアイディアでスタートアップ育成プログラムで受賞などもしていますし、気になるスタートアップの一つです。

IBM® BlueHubの「Open Innovation Initiative For Automotive/Healthcare」で『Avenue-Cross』を活用したサービスプランが最優秀賞・審査員特別賞を受賞
http://pwlvc.com/jp/infomation/press_release/20161209_001.html

2017年1月13日金曜日

デロイトトーマツ グループの財務諸表と財務指標

デロイトトーマツ グループの財務諸表と財務指標

Big4 FinTechの取り組みにて、FinTechに関し、他の会計事務所に比べ、トーマツは官民共同で討議を行う場に多く参加していると、言及致しました。

トーマツがどのような会社か気になったので、FinTech普及を担う企業ということで、企業研究を行ってみたいと思います。

監査法人だけでなく、コンサルティング会社もあるので、どれくらいグループ会社があるのか調べたところ、実に17法人とかなりの規模となっています。(グループ法人一覧を参照)。

こちらに直近のBS/PLがありますので、内容を見ていこうとおもうのですが、アカウンティングの勉強の際にお世話になった『会計力と戦略思考力』に倣い、どのようなBS/PLかイメージをしてみます。BS/PLの項目について、他事業会社と監査法人の違いにはついては知識がないため、一般の事業会社の項目名に従います。

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貸借対照表
資産
1. 一番のアセットが人と考えると、資産サイドは多くないはず
2. さらに、事務所以外の固定資産は存在せず、その金額は少なく、流動資産が大半を締めるのではないだろうか
3. 売掛金、監査報酬の支払いサイトがわからないため不明。単純に、月ごとの請求で末締め、翌月末払いとうであれば、年間売上の二ヶ月分が計上されているのだろうか
4. 監査が主サービスである以上、他社の株を多く保有することは考えられず、有価証券の金額もすくないのでは

負債
1. 監査が主サービスであることを考えると、仕入が必要なく買掛金はないだろう。
2. 監査が主サービスであることを考えると、その性質から銀行から借入をして事業拡大することは考えにくく、借入金も少ないはず

純資産
1. 事業開始にあたって多くの資本は必要ないと考えられるので、資本金もすくないはず
2. 監査で多大な利益をあげるとは考えにくく(被監査会社より利益をあげていたら、監査報酬引き下げへつながると予想される)、利益剰余金は少ないだろう。

損益計算書
1. 粗利は極めて高いが、人件費が多くをしめ販管費がかさむことを考えると、営業利益率は決して高くはないのではないか
2. 有価証券の保有がすくなく、借入金もすくないだろう、という予想にたつと、営業外収益/費用の金額はすくなく、売上総利益と純利益の金額がかなり近いものになるのではないだろうか。

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上記が予想するBS/PLに対する仮説です。その仮説を考えたうで、財務指標上でどうなるか、『戦略思考で読み解く 経営分析入門』に記載されているサービス業の各財務指標と比較したいと思います。8年前の数字であり、かつリーマンショックまっただ中の数値なので、指標としてどうなのかという疑問は残りますが、あくまで仮説を検証するためのものなので、問題ないでしょう。

各指標(2008年4月〜2009年3月)のサービス業界平均

サービス業 平均トーマツ(予想)
売上高反管費比率21%人件費が嵩み、50%を超えるのでは?
売上高営業利益率8.4%原価はかからないものの、人件費の高さを考えると、これよりも低いのは、4%ほどか
EBIDAマージン10.8%買収によるのれんや、減価償却費はすくないと考えられるので、売上高営業利益率とほぼ同じくらいか
ROE4.0%レバレッジは決して高くないはず。借入金がないので、これより下がるのではないか。2~3%か
ROA8.6%総資産は一般のサービス業と比べても少ないと考えられるが、利益率も決して高くはないだろうし、同じような数値か

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では、2015年10月から2016年9月期のBS/PLをみて、上記の財務指標の仮説を検証していきたいと思います。

貸借対照表
資産 合計525億7900万
流動資産395億9500万業務未収入金: 145億3800万
固定資産129億8400万

負債及び純資産 合計525億7900万
負債295億7600万業務未収入金: 145億3800万
固定資産230億0300万

損益計算書
業務収入964億7800万監査業務:704億5900万、非監査業務: 260億1900万
営業利益13億1600万

財務指標
指標トーマツ(実績)
売上高反管費比率98%PLで販管費という項目はなく、
業務費用というものが951億6100万。
ほぼ、売上である業務収入と同等ですね。
業務費用=販管費とすると、98%となります
人件費が723億と実に業務収入の75%を占めます。
売上高営業利益率1.3 %予想以上の販管費率の高さで、
営業利益率も予想よりかなり下回りました
EBIDAマージン2.7 %予想外だったのは営業利益と同等以上の、
配当金による営業外収益。
グループ会社からの配当金でしょうか。
減価償却費はなく支払利息の額も少ないので、
為替差益に税引前利益に追加すると、
2.7%と売上高利益率の倍となりました。
ROE8.1 %他サービス業と同じような数値になりました。
ROA8.6%13億1600万/525億7900万で2.5%となりました。
やはり予想以上の営業利益率の低さによるものです

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98%, 売上高に占める業務費用(=販管費)の割合の高さにより、各財務指標に特徴がでているかと思います。

一般的にいっても、営業利益率が1.3%というのは「低く」感じられますが、最初に予想したように、利益率が高ければ被監査企業から監査報酬を引き下げるようにプレッシャーを受けるでしょうし、妥当な数値をいったところになるのでしょうか。