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2017年2月18日土曜日

矢野健太郎『数学の考え方』

矢野健太郎『数学の考え方』を読了



1964年に出版された原書を2015年に文庫化された本です。著者による1964年時のまえがきも魅力的です。

学校で教わる数学が面白くない問題を冒頭に取り上げ、下記が原因の一つではと言及しています。
教師があなたに数学の話をするばあいに、あなたが一般の人であって、かならずしも科学や技術をめざす人ではないことを忘れて、あまりに細かい計算や技巧にこだわりすぎることではないかと思います。
がしかし、数学の本質は計算や技巧ではなく、考え方、思想であるとし、本書では、その観点から数学の歴史が紐解かれています。
ところが、数学の生い立ちを振り返ってみますと、その本質は計算や技巧の歴史ではなく、むしろ考え方の歴史、思想の歴史であるといってもよいようです。
私自身の言葉でいうと「数学」を言語として捉え、その歴史についての本です。
下記が目次です。

まえがき
第1章 歴史が始まるまえの数学
第2章 古代の数学
第3章 数学の歩み
第4章 17世紀の数学
第5章 トポロジー
第6章 集合
第7章 確率
おわりに

第1章、第2章あたりまでは、歴史的エピソードや具体例も多く読んでいて非常に勉強になりますし、面白いです。

その後に関しては、章や節によって記述の粒度にばらつきがあるというか、単なる紹介のみが行われ、数学初心者としては理解しにくい箇所も多いです。

例えば、同じ第3章内であっても、対数については、なぜ対数の概念が必要になったのか、天文学における「計算」という実務から説明されていて非常に理解がしやすかったのですが、一方幾何学に関する節は、様々な概念が背景等の説明なしに列挙されているように見受けられました。

とは言うものの、全体としてはわかりやすい説明が多く、「言語としての数学」を理解する上で、お勧めの一冊です。