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2017年2月3日金曜日

API管理ツール、OSSも登場

レッドハットのAPI管理システムでもとりあげましたが、FinTechの肝の一つでもあるAPI連携を支える技術として、API管理ツールがありますが、OSSも登場しているとのことです。

API管理ツール、OSSも登場して戦国時代へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/012500793/

上記記事で取り上げらえているKongのページはこちら。
https://getkong.org/

Webブラウザ上で開発環境の構築が行えるKodingで、Kongのトライアルが行えるとのこと。

Orchestrate Common FunctionalityでLegacy ArchitectureとKong Architectureが比較されています。ESB同様システム間の接続を一つのゲート経由で行うことによって、管理効率を高めようというのが狙いですね。となると、ESBの中の1コンポーネントとしてAPI Managementツールが管理できるのが、Architecture上望ましいかと思います。

社内外問わず、通信を行うのはAPIのみとも限らないので、「社内外の通信」全てを管理するツールとして、ESBを使用しAPIはその中の一ドメインとするのがいいのかと思います。

2017年2月1日水曜日

保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表

今回はダイレクト系損害保険会社の財務諸表をみていきます。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTechで取り上げたように、保険会社のイノベーションの度合いをコンバインドレシオから評価する方法があるあります。そこで損害保険会社の財務諸表をもとに比較を行っていこうと思うのですが、今回はダイレクト系損害保険傾斜に絞りました。

ダイレクト系にしぼった理由は、販売チャネルが通販、Webと限られていることから、比較がしやすいですし、また非ダイレクト系の損害保険会社と比べビジネスにおけるテクノロジーのインパクトが大きいからです。

さて、下記に2000年から2014年の元受正味保険料の推移のグラフが掲載されています。

ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較
http://www.sonpo-direct.com/uriage.html

老舗のアメリカンホームダイレクトの減収や、ソニー損保のひとり勝ちなどがグラフからもみてわかるかと思います。

さて、コンバインドレシオ等の経営指標については、各社のウェブサイトに掲載されているディスクロージャー誌より集計を行ってみました。
下記、主要ダイレクト系損害保険会社のコンバインドレシオ、正味事業費率の推移です。

2011年から2015年までの数字をみますと、ソニー損保とアクサ損保の2社のみがコンバインドレシオ100%を常に下回っており、また事業費率も常に30%以内に抑えています。先の「ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較」でも、この2社がランキングの1位、2位を占めており、それを裏付ける数字といえましょう。


コンバインドレシオ 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 89.00% 89.20% 84.90% 84.30% 84.80%
AXA損保 92.90% 88.30% 88.70% 85.50% 82.40%
チューリッヒ 113.70% 100.60% 102.60% 96.80% 112.60%
三井ダイレクト 98.80% 99.30% 97.00% 101.70% 100.90%
SBI損保 92.30% 103.20% 98.80% 100.40% 104.70%






正味事業費率 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 25.70% 26.00% 25.60% 26.70% 27.10%
AXA損保 24.10% 20.70% 21.90% 21.90% 24.10%
チューリッヒ 44.40% 37.50% 40.80% 40.90% 39.30%
三井ダイレクト 21.40% 20.70% 20.70% 22.80% 21.90%
SBI損保 44.00% 33.40% 26.40% 22.80% 18.60%

AXA損害保険はAXAグループの中の一社です。AXAグループは保険のイノベーションを語る際に、先進的な例として取り上げられることが多いのですが、次回「保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み」でその詳細をみていこうと思います。

なお、損害保険会社の財務諸表の見方に興味がある方は、日本損害保険協会の下記ページをご覧ください。

損害保険会社のディスクロージャー かんたんガイド

国家戦略としてのFinTechの本質と全体像

FinTechの本質と全体像を理解する上で、森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏がStartup Innovatorsに掲載されているFinTechに関する記事がおすすめです。

概要をまとめると、以下のようになります。
  • FinTechにより、他業界(音楽、出版)でおきていた技術より、ビジネルモデルの変化、プレイヤーの変化が起きる。
  • 他業界と異なるのは、金融は産業の基盤であり国力の源泉となるので、国家戦略として規制を考えなくてはいけない。
  • 他国も自国の国力を増進させるように規制作りを進めるので、国際金融規制においてルールメイキングにおける競争がおこる。
  • 日本国内では、国内のルールメイキングを行うプレイヤーが揃いつつある。
以下、主要な記事毎のまとめです。

FinTechの正体
FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(前編)
FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(後編)

まずは、「FinTechの正体」のポイントをまとめてみます。

  • 現在おきているFinTechの潮流は、これまで音楽や出版等の他業界に与えたのと同様、該当業界以外からのイノベーターが出現し、既存の金融機関は後塵を拝しつつある。そのイノベーターはこれまでの金融機関とことなる事業モデルやサービスで競争に参入してきている。
  • 金融業というのは、リストを移転ないしは仲介するビジネスである。そのため金融商品、サービス設計にあたってリスク情報生産/管理を行うのが、そこに事務コストがかかり、商品/サービスを設計する上での制約となっている。
  • 技術の進歩により、リスク情報生産/管理を行うコストは劇的に下がっており、コスト削減だけではなく、金融商品/サービスの設計をも劇的に変えうる。
  • ユーザ/消費者が欲しいのは、ローンや保険ではなく、家/車/安全で健康の生活である。ローンや保険等の金融サービスは手段でしかない。
  • 日本国としては、他国に先駆ける形で、FinTechに関する規制改革と運用の枠組みを要し、自国の事業モデルの確立が必要。海外の金融業者が国内を席巻するという事態を招いてはならない。

続いて、「FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(前編)」のポイントをまとめみます。
  • FinTechの歴史としてはリーマンショックが起源。需要サイドとしては、リーマンショックによる金融収縮の結果、金融サービスを受けられなくなった個人、中小企業がalternativeな金融を求めるようになっていった。また供給サイドとしは、解雇された金融機関のIT部門のエンジニア達が新しいサービスを立ち上げはじめた。
  • FinTechスタートアップ会社は金融をレイヤー毎(インフラレイヤー、プラットフォームレイヤー、アプリケーションレイヤー)に捉え、それぞれのレイヤーを置き換える技術によってビジネスを進めている。
最後に、FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(後編)」のポイントです。
  • 金融は産業の基盤であり国力の源泉であるため、Google, Facebookのように国内マーケットを海外勢に席巻されるわけにはいかない。
  • 金融規制を考える際は産業全体や国益を守るために、どのように規制をしていくかという議論が必要。
  • FinTechに関し、先進諸国は自国の国力増進のために、国際金融規制において政治力を行使しようとする。国際金融規制のルールメイキングでは、お互いの国力増進のために国同士で競争が起こる。
  • 既存の規制の枠組みのなかでTry & Errorが可能になるレギュラトリーサンドボックスという手法が、現在各国当局によって試みられている。
  • FInTechの規制や枠組みを定めるために、①政府、②政治家、③金融機関、④ベンダー、⑤スタートアップといったプレイヤーが必要。
  • 金融機関では、全銀協、地銀協、証券業協会、生保協、損保協などがカウンターパートになる。