Navigation

2017年2月18日土曜日

矢野健太郎『数学の考え方』

矢野健太郎『数学の考え方』を読了



1964年に出版された原書を2015年に文庫化された本です。著者による1964年時のまえがきも魅力的です。

学校で教わる数学が面白くない問題を冒頭に取り上げ、下記が原因の一つではと言及しています。
教師があなたに数学の話をするばあいに、あなたが一般の人であって、かならずしも科学や技術をめざす人ではないことを忘れて、あまりに細かい計算や技巧にこだわりすぎることではないかと思います。
がしかし、数学の本質は計算や技巧ではなく、考え方、思想であるとし、本書では、その観点から数学の歴史が紐解かれています。
ところが、数学の生い立ちを振り返ってみますと、その本質は計算や技巧の歴史ではなく、むしろ考え方の歴史、思想の歴史であるといってもよいようです。
私自身の言葉でいうと「数学」を言語として捉え、その歴史についての本です。
下記が目次です。

まえがき
第1章 歴史が始まるまえの数学
第2章 古代の数学
第3章 数学の歩み
第4章 17世紀の数学
第5章 トポロジー
第6章 集合
第7章 確率
おわりに

第1章、第2章あたりまでは、歴史的エピソードや具体例も多く読んでいて非常に勉強になりますし、面白いです。

その後に関しては、章や節によって記述の粒度にばらつきがあるというか、単なる紹介のみが行われ、数学初心者としては理解しにくい箇所も多いです。

例えば、同じ第3章内であっても、対数については、なぜ対数の概念が必要になったのか、天文学における「計算」という実務から説明されていて非常に理解がしやすかったのですが、一方幾何学に関する節は、様々な概念が背景等の説明なしに列挙されているように見受けられました。

とは言うものの、全体としてはわかりやすい説明が多く、「言語としての数学」を理解する上で、お勧めの一冊です。

デリダの概念からプログラミングを考える

矢野健太郎『数学』の考え方のポストを書く上で、数の概念も身体性に強く紐付いていることを考える際に、パロール/エクリチュールの関係が援用できるのではないかと思い、面白い記事がない調べてみたところ、下記のものを見つけることができました。

エクリチュールとしてのプログラミング

このブログで、下記のカテゴリーでITと哲学に関するポストで考察してきたことと同様のことが上記の記事で言及されています。

http://fintechstrikesback.blogspot.jp/search/label/Philosophy

金融庁と金融業界のFinTechに関する論点整理

FSAのウェブサイトに、FSAが 書く各金融団体との意見交換会において提起した論点を公表しています。

主要銀行との意見交換での提起された論点が下記にまとめられています。

下記引用にあるように、テクノロジーに関する論点が大半をしめております、かなり積極的な内容となっています。
○ IT テクノロジーの進化に伴いビジネスのゲームチェンジが加速する 中で、将来を見据えた経営全体としての意思決定を遅滞なく行ってい くことが課題。伝統的な銀行業の収益性が低下する上、FinTech 企業の 参入により競争環境も厳しくなる中、資本コストを意識し業務の選択 と集中を進めることが重要。 
○ その際、これまでの方針を大幅に変えるような意思決定を果断に実 施できるような態勢が整備できているか、短期的に痛みを伴うが中長 期的に企業価値を向上できるような改革を継続的に行っていけるよう なガバナンスが構築できているかが重要。 
 ○ 法制面でも、環境変化への適切な対応が求められており、昨年は金 融グループ経営や ITの進展を踏まえた制度面での手当てを行ったとこ ろである。本年においても、電子決済分野におけるオープン・イノベ ーションの推進のための法案の提出等を予定。 
○ 今後予想される ITの進化に伴う金融サービスのアンバンドリングと 顧客を中心としたリバンドリングの更なる進展などを考えると、現行 の金融規制体系が時代遅れになる可能性も考えられる。顧客の保護と 利便性向上、金融システム維持が確保され、経済の発展に資する規制 体系を前広に考えていく必要。
リスクをとるようなガバナンスのあり方や、金融サービスのアンバンドリング、リバンドリングについて言及するなど、銀行に変化を促すFSAの姿勢が読み取れます。

2017年2月14日火曜日

探索アルゴリムズまとめ

edX ColumbiaXのAI (CSMM.101x)で説明されているAIで使用される探索アルゴリムズのまとめです。

b: 一つの分岐における最大の分岐数
d: 探索木における解がある深さ
m: 探索木における最大の深さ

Uninformed Search (=網羅的探索 brute-force search, 盲目的探索 blind search)
BFS: Breadth-first Search 横型探索法、幅優先探索法
空間計算量:O(b^d)
時間計算量:O(b^d)
  完全性:○(分岐bが有限の場合。無限の場合は完全ではない)
  最適性:○(グラフの重みが全て同じであれば、最適である)

アルゴリズム
function BFS (initialState, goalTest)
    returns SUCCESS or FAILURE:

    frontier = Queue.new(initialState)
    explored = Set.new()

    while not frontier.isEmpty()

        state = frontier.dequeue()
        explored.add(state)

        if goalTest(state):
            return SUCCESS(state)

        for neighbour in state.neighbours():
            if neighbour not in frontier U explored:
                frontier.enqueue(neighbour)
    return FAILURE

DFS: Depth-first Search 縦型探索法、深さ優先探索法
空間計算量:O(bm)
時間計算量:O(b^m)
  完全性:○(深さが有限の場合)
  最適性:✖️

アルゴリズム
function DFS (initialState, goalTest)
    returns SUCCESS or FAILURE:

    frontier = Stack.new(initialState)
    explored = Set.new()

    while not frontier.isEmpty()

        state = frontier.pop()
        explored.add(state)

        if goalTest(state):
            return SUCCESS(state)

        for neighbour in state.neighbours():
            if neighbour not in frontier U explored:
                frontier.push(neighbour)
    return FAILURE

IDS: Iterative Deepening Depth-first Search 反復深化深さ優先探索
空間計算量:O(bd): bは分岐係数、dは深さ
時間計算量:O(b^d)
  完全性:○
  最適性:○

説明:IDSを知識あり探索にしたものがIDA*である。これは、ダイクストラ法を知識あり探索にしたものがA*であることに対応する。

DA: Dijkstra Algorithm ダイクストラ法
空間計算量:
時間計算量:
  完全性:
  最適性:

UCS: Uniform-Cost Search 均一コスト探索法
空間計算量:O(b^(c/e)): Cは最適解のコスト、eは1アクションあたりの最低コスト
時間計算量:O(b^(c/e))
  完全性:○(コストが有限の場合)
  最適性:○

説明:ステップコストが全て同じであるときは幅優先探索と同じアルゴリズムになる。

アルゴリズム
function UCS (initialState, goalTest)
    returns SUCCESS or FAILURE: /*Cost f(n) = g(n) */

    frontier = Heap.new(initialState)
    explored = Set.new()

    while not frontier.isEmpty()

        state = frontier.deleteMin()
        explored.add(state)

        if goalTest(state):
            return SUCCESS(state)

        for neighbour in state.neighbours():
            if neighbour not in frontier U explored:
                frontier.insert(neighbour)
            else if neighbour in frontier:
                 frontier.decreaseKey(neighbour)
    return FAILURE

Informed Search (=発見的探索法 heuristic search)
Greedy Best-first Search 最良優先探索法

空間計算量:
時間計算量:
  完全性:
  最適性:

説明:
(1)方向性をもった探索なので、縦型探索や横型探索よりも早く解が求められる。
(2)未探索接点を全て保存しておく必要があるので使用メモリが膨大となる。
(3)適当な発見的関数が存在しない場合には使えない

アルゴリズム
function GBFS (initialState, goalTest)
    returns SUCCESS or FAILURE: /*Cost f(n) = h(n) */

    frontier = Heap.new(initialState)
    explored = Set.new()

    while not frontier.isEmpty()

        state = frontier.deleteMin()
        explored.add(state)

        if goalTest(state):
            return SUCCESS(state)

        for neighbour in state.neighbours():
            if neighbour not in frontier U explored:
                frontier.insert(neighbour)
            else if neighbour in frontier:
                 frontier.decreaseKey(neighbour)
    return FAILURE

A* Search エイスター探索法
空間計算量:
時間計算量:
  完全性:
  最適性:○(発見的関数h(n)が許容的(admissibleな場合))

説明:A*アルゴリズムは、ダイクストラ法を推定値つきの場合に一般化したもので、hが常に0である場合はもとのダイクストラ法に一致する。
(1)最適経路が必ず得られる
(2)条件を満たす発見的関数が思いつかない場合には使えない
(3)方向性をもった探索なので、縦型探索や横型探索よりも早く解が求められる
(4)最良優先探索と同様の理由で使用メモリが膨大になる

アルゴリズム
function GBFS (initialState, goalTest)
    returns SUCCESS or FAILURE: /*Cost f(n) = 
g(n) + h(n) */

    frontier = Heap.new(initialState)
    explored = Set.new()

    while not frontier.isEmpty()

        state = frontier.deleteMin()
        explored.add(state)

        if goalTest(state):
            return SUCCESS(state)

        for neighbour in state.neighbours():
            if neighbour not in frontier U explored:
                frontier.insert(neighbour)
            else if neighbour in frontier:
                 frontier.decreaseKey(neighbour)
    return FAILURE

Local Search
Hill Climbing Search(Greedy Local Search): 山登り法
空間計算量:
時間計算量:
  完全性:
  最適性:✖️

説明:
(1)現在の状態だけを保存しておけばよいので、最良優先探索法に比べ使用メモリならびに探索の手間が少ない
(2)バックトラックが得られるとは限らない
(3)最適解が得られるとは限らない

アルゴリズム
function HILL-CLIMBING(initialState)
    returns State that is a local maximum

   
    initialize current with initialState

    loop do
         neighbour = a highest - valued successor of current

         if neighbour.value <= current.value:
              return current.state
         current = neighbour

2017年2月13日月曜日

CSMM.101x: Week 4: Adversarial Search and Games

edX ColumbiaXのAI (CSMM.101x) Week4のまとめです。

日本語資料では、下記が参考になりそうです。

ミニマックス法とアルファベータ法
http://www.geocities.jp/m_hiroi/light/pyalgo24.html

Suggest Readings
下記が参照記事としてあげられています。
WIRED: Inside Libratus, the Poker AI That Out-Bluffed the Best Humans: http://www.wired.com/2017/02/libratus/
4.1 Adversarial Search and Games
Adversarial Search(∽game)が今回のテーマです。Adversarial Searchは適切な訳が見つけられませんでした。
ゲームの特徴は我々がコントロールできない相手が存在することで、最適なソリューションは一連の行動ではなく、strategy(policy)となる。

ゲームの種類は、プレイヤーの手が全て見えているかどうか、また運の要素があるかどうかの二軸で、四次元に分けられる。

Perfect Information
Deterministic: Chess, Checkers, Go, Othello
Chance (stochastic): Backgammon, Monopoly

Imperfect Information
Deterministic: Battleships, Blind Tictactoe
Chance (stochastic): Bridge, Poker, Scrabble Nuclear War

AIで主に扱うのは、ゼロサムゲームと呼ばれる、Chess, Checkers, Go, OthelloなどのPerfect Informationが与えられ、Deterministicなゲームである。

Zero-sum Gamesの特徴
* Adversarial: Pure Competition
* Agents have different values on the outcomes
* One agent maximizes one single value, while the other minimizes it

4.2 Minimax algorithm
ミニマックス法の説明が行なわれている。
以下が特徴としてあげられる。
1. DFSである
2. 最適な解は探索木のどの深さでもありうる。
3. 解は最適であり、有限な探索木であれば完全性が保証される
4. 時間計算量は O(b^m), 空間計算量はO(bm)
が、現実的な場面では時間が限られており、全てのリーフの探索はできない。
対応方法のひとつとして「枝刈り」がある。

4.3 Alpha-Beta Pruning (アルファ・ベータ枝刈り)
代表的な方法としてα-β 枝刈りが紹介されている。
Strategy: ミニマックス法と同じく、DFSである。
αは、Maxのなりうる最大値であり、その時点でのMaxの最下限の数値である
βは、Minのなりうる最小値であり、その時点でのMinの最上限の数値である

4.4 Stochastic games
サイコロをなげる、カードをシャッフルするなどランダムな要素のあるゲーム
探索木にChanceノードというノードを追加し、ランダムな要素を組み込む
例:バックギャモン(バックギャモン、日本では一般的なゲームではないので、私としてはわかりにくい例です)

Week 4 Quiz: Adversarial Search and Games
前半は好調でしたが、後半間違いを重ねてしまい、得点はギリギリPassの60%でした。
ミニマックス法とα-β枝刈り法の設問は基本的なものが多かったものの、Utility/Eval functionに関するものや、Expectiminimaxに関する質問は該当の箇所の講義をしっかりと視聴していなかったため、得点できませんでした。

Week 4 Project: Adversarial Search and Games
Week 2と同様にPythonでのコーディングの課題です。やはり分量が多いので、どこかで時間を作ってWeek 2とまとめて取り組んだ方が良さそうですね。

Week 4 Discussion Questions
チェッカーというゲームのChinook(チノーク)というAIについて議論するのが課題になっていますが、グレードの対象外ですので、スキップしました。

2017年2月12日日曜日

CSMM.101x: Week 3: Heuristic Search

edX ColumbiaXのAI (CSMM.101x) Week3のまとめです。

今回取り上げられているヒューリスティック検索や前回の講義で取り上げられている、幅優先探索等を日本語で理解するためには、下記サイトを参照致しました。

ヒューリスティック探索
幅優先探索と反復深化
欲張り法 (greedy strategy)

3.1 Heuristic and Greedy Search Algorithm
前回説明されたUninformed Searchに対し、解に近づいているかどうかがわかるInformed Searchが今回の講義のテーマです。

最良優先探索(Greedy best-first search)、Aスター探索、反復深化Aスター探索がInformed Searchの例としてあげられています。

3.2 A* Search and Optimality
Aスター探索となぜ、それが最適な解を提示し得るかの説明がされています。

3.3 Search Algorithms Recap
ここでは、今まで説明された、BFS, DFS, IDS, UCS, A*, IDA*, Greedy best first search, A* Searchの各種アルゴリズムの特徴が説明されています。
ここまでの講義の最重要点ですので、別途まとめてポスト予定です。

3.4 Local Search (局所探索法)
局所探索法としてHill Climbing 山登り法の説明がされています。

Week 3 Quiz: Heuristic Search
ヒューリスティック関数の性質に関する質問で1問間違えたものの、他はすべて正解ができました。ヒューリスティック関数が許容的(admissible)かどうか、特定条件下で各アルゴリズムのcompletnessはどうか、といった設問が多かったです。

Week 3 Discussion Questions
ダイクストラ法と均一コスト法の比較を行っている下記論文が紹介されています。こちらも別途ポスト予定の探索アルゴリズムまとめで言及する予定です。

Position Paper: Dijkstra’s Algorithm versus Uniform Cost Search or a Case Against Dijkstra’s Algorithm
http://www.aaai.org/ocs/index.php/SOCS/SOCS11/paper/viewFile/4017/4357

技術とソフトウェア開発手法

FinTechとアジャイル開発をポストした後、ソフトウェア開発の手法に関する記事をいくつか読んでいたのですが、ITと哲学概念と言葉と課題と答え述べてきた私の考えとマッチするというか、よりわかりやすい説明が行われている記事を見つけました。

「現状のソフトウェア開発は間違っていないか?」(プロセス編) (1/3)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/0901/28/news151.html

上記の記事では(記事の執筆者が考える)ウォーターフォール開発の歴史が紹介されており、そこで「メインフレーム開発」という特定の技術と状況において使用され、かつマッチしていたと紹介しています。また、当時のシステムに対する要求というものが、そもそもシンプルであったことも指摘されています。

しかしながら、業務が変わったことにより今日の要求は複雑化するし、かつ技術もオープン系になっているため、必ずしもウォーターフォール開発の手法はマッチするわけではないというのは筆者の主張です。

さらには、要求(とくべき課題、what)とソリューション(how)の関係についても、必ずしもwhatからのみhowを考えるのではなく、howからwhatを考えるという双方向の視点も筆者は取り入れており、これが私がITと哲学概念と言葉と課題と答えで述べてきたことと相通ずるものがあると考える点です。

ある手法を歴史的背景、その手法が使用され始めた状況や技術を踏まえて批判的に分析し、強み弱みを捉えるのは、開発手法のみならず、他の様々なフレームワークを分析する上でも有用かと思います。

そんな中ふと、以前に読んだ三谷宏治『経営戦略 全史』を思い出しました。


「SWOT分析」、「プロダクトポートフォリオマトリクス」、「Fice Forces分析」等の分析ツールやフレームワークがどのように生み出され、使用されかつ批判継承されていったのかが理解できる良書です。ソフトウェア開発でも同様の本があれば読んでみたいです。

FinTechとアジャイル開発

大手金融機関がFinTechに取り組むにあたって、既存のビジネスラインの利害や意思決定のプロセスに左右されないように新規部署を設置して取り組むことが多いかと思います。

新しいサービスには新しい組織で臨もうということですが、であればツールとしての開発手法も従来のWater Fall型だけでなく、アジャイル開発の手法が適用されることも多いのではないかと。下記記事ははみずほ銀行が、アジャイル開発に取り組んでいるのを紹介しています。

「スマホで手軽に資産運用」の時代は訪れるか――みずほ銀行がアジャイル開発で取り組む「ロボアドバイザー」の今後 (1/2)
http://www.atmarkit.co.jp/ait/articles/1602/08/news020.html

私自身は、アジャイル開発のトレーニングも受けたこともありますし、開発チームをリードする上でスクラムの手法を適応したこともありますので、そのメリットも理解しているつもりです。金融機関であれば、システム開発のプロジェクトにおいては、アジャイル開発/スクラムの手法に関して知識を得ることは、必要不可欠と思いますし、該当のプロジェクトの特性やメリット、デメリットを考慮した上で、導入を試み試行錯誤を繰り返すというのも必須かと思います。

が、あらゆるシステム開発のプロジェクトにおいてアジャイル開発が適しているとは限らないですし、Water Fall型 vs アジャイル開発と、互いを対立させる視点から双方を理解するのもよろしくないかと思います。

といったことと考える中で従来のプロジェクトマネジメントについて色々検索していたところ、下記のブログをみつけました。

タイム・コンサルタントの日誌から
http://brevis.exblog.jp/

下記のような面白い記事が多いです。
プロジェクト・コミュニケーションのベーシック(2) ~ ドキュメント・インデックスを作る
http://brevis.exblog.jp/24715817/

スクラムといえば、以前に読んだ下記の本も非常に面白かったです。本書で紹介されている、FBIにおけるシステム開発の例が示唆に富んでいます。

2017年2月11日土曜日

Startupbootcamp in Vimeo

VimeoでFinTechと検索したところ、検索結果としてLondonにあるFinTechアクセレータのStartupbootcampの映像がいくつか表示されました。


ヨーロッパのFinTechスタートアップだけでなく、日本企業のBankGuardも紹介されています。
Startupbootcamp Fintech #sbcStartupOfTheWeek - BankGuard from Startupbootcamp on Vimeo.

2017年2月8日水曜日

米国と中国のAI特許

数の米国、攻める中国 AI特許6万件を解剖
https://vdata.nikkei.com/newsgraphics/ai-patent/

上記記事で取り上げられているように、特許出願の件数では米国が1位であるものの、伸び率では中国が1番となっています。一方、日本は出願件数では減少となっています。

驚いたのは、米国のAI関連論文のうち12.7%が中国の機関や個人との共著とのこと。2位の英国の5.1%との二倍強のパーセンテージですね。

一方日本は1.8%のみ。

AI特許出願及び論文の競争では日本は完全に出遅れている、ということでしょうか。

2017年2月5日日曜日

保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険会社とFinTechシリーズ、最後のポストです。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界のデジタル化の現状と取り組みを例に、保険会社のDigitalizationでAXAが取り上げられることが多いです。

以下、上記レポートでAXAについて言及されている箇所のポイントをまとめます。
  • AXAは、アメリカのバークシャーハサウェイに次いで世界2位の規模お有する、フランスの保険グループである。2014年の総収入は1,612億ドルを超え、顧客数は1億人を超える。
  • 近年はDigital Transformationを最優先の戦略課題として掲げており、2013年から2015年間の3年間で9.5億ユーロの投資を行っている。
  • 同社のデジタル化の取り組みの要の組織として、AXA Lab、AXA Strategic Ventured, Data Innovation Labがある。
  • AXA Labは2013年10月にデジタル文化の醸成、イノベーションを主導することを目的にシリコンバレーに設置された組織である。トップテクノロジー企業等との関係構築や、テクノロジーに関する新規事業、タレントの動向をつかむことをミッションとしている。
  • AXA Strategic Venturesは、保険および資産運用、金融技術、ヘルスケア事業における イノベーション企業への投資を行うことをミッションとするベンチャーキャピタルであり、AXA Labをオフィスを共有している。
  • Data Innovation Labは2014年にパリに設置されたビッグデータ分析を専門とするチームである。顧客サービスや商品開発等のサポートを行っており、Kaggleで自動車てレマティクスのデータを用いたアルゴリズム開発コンペの実施をした。
下記はAXA Lab設立の際のアナウンスメントメッセージです。

Frédéric Tardy, Chief Marketing & Distribution of AXA Group announces the creation of the AXA Lab


また、AXAがDisruptiveなinnovationに対し、どのように取り組んでいこうしているかを説明するメッセージムービーもあります。

AXA partners with startups to develop disruptive business models


日本の保険会社ではSOMPOホールディングスがSOMPO Labを立ち上げ、同様にシリコンバレーに拠点を作成しています。

今後、保険会社がどのようにDigital Transformation/Innovationを起こしていくか、楽しみです。

FinTechでお年玉

FinTechで(通常の銀行振込ではなく、別のアプリケーションで)、お年玉をあげることについて。

会っていない子供にもFinTechでお年玉、さま変わりする韓国の旧正月
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/549762/020100129/

送金するだけでなく、いつ、誰から送金されたかの情報であったり、送金する方のメッセージを保管するサービスがあったらいいと思います。

おじいちゃん、おばあちゃんが孫にお年玉を送る際にちょっとしたメッセージ(テキスト、音声、動画)を添えたりで、孫が大きなってからそのメッセージを見返したりできるのは素敵なことじゃないかなと。

ジュニアNISA講座を開設している銀行等でも、このようなサービスを開始してくれたらと思います。

お金は色も形もないものですが、親や祖父母が自分の子や孫にお金を贈る際、何かしらの想いとともに贈るはずですし、そういったものを残して、あとから見返すことができるようなサービスがあってもいいんじゃないかと。

2017年2月3日金曜日

API管理ツール、OSSも登場

レッドハットのAPI管理システムでもとりあげましたが、FinTechの肝の一つでもあるAPI連携を支える技術として、API管理ツールがありますが、OSSも登場しているとのことです。

API管理ツール、OSSも登場して戦国時代へ
http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/column/14/346926/012500793/

上記記事で取り上げらえているKongのページはこちら。
https://getkong.org/

Webブラウザ上で開発環境の構築が行えるKodingで、Kongのトライアルが行えるとのこと。

Orchestrate Common FunctionalityでLegacy ArchitectureとKong Architectureが比較されています。ESB同様システム間の接続を一つのゲート経由で行うことによって、管理効率を高めようというのが狙いですね。となると、ESBの中の1コンポーネントとしてAPI Managementツールが管理できるのが、Architecture上望ましいかと思います。

社内外問わず、通信を行うのはAPIのみとも限らないので、「社内外の通信」全てを管理するツールとして、ESBを使用しAPIはその中の一ドメインとするのがいいのかと思います。

2017年2月1日水曜日

保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表

今回はダイレクト系損害保険会社の財務諸表をみていきます。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTechで取り上げたように、保険会社のイノベーションの度合いをコンバインドレシオから評価する方法があるあります。そこで損害保険会社の財務諸表をもとに比較を行っていこうと思うのですが、今回はダイレクト系損害保険傾斜に絞りました。

ダイレクト系にしぼった理由は、販売チャネルが通販、Webと限られていることから、比較がしやすいですし、また非ダイレクト系の損害保険会社と比べビジネスにおけるテクノロジーのインパクトが大きいからです。

さて、下記に2000年から2014年の元受正味保険料の推移のグラフが掲載されています。

ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較
http://www.sonpo-direct.com/uriage.html

老舗のアメリカンホームダイレクトの減収や、ソニー損保のひとり勝ちなどがグラフからもみてわかるかと思います。

さて、コンバインドレシオ等の経営指標については、各社のウェブサイトに掲載されているディスクロージャー誌より集計を行ってみました。
下記、主要ダイレクト系損害保険会社のコンバインドレシオ、正味事業費率の推移です。

2011年から2015年までの数字をみますと、ソニー損保とアクサ損保の2社のみがコンバインドレシオ100%を常に下回っており、また事業費率も常に30%以内に抑えています。先の「ダイレクト自動車保険2016売上げランキングの比較」でも、この2社がランキングの1位、2位を占めており、それを裏付ける数字といえましょう。


コンバインドレシオ 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 89.00% 89.20% 84.90% 84.30% 84.80%
AXA損保 92.90% 88.30% 88.70% 85.50% 82.40%
チューリッヒ 113.70% 100.60% 102.60% 96.80% 112.60%
三井ダイレクト 98.80% 99.30% 97.00% 101.70% 100.90%
SBI損保 92.30% 103.20% 98.80% 100.40% 104.70%






正味事業費率 2011 2012 2013 2014 2015
ソニー損保 25.70% 26.00% 25.60% 26.70% 27.10%
AXA損保 24.10% 20.70% 21.90% 21.90% 24.10%
チューリッヒ 44.40% 37.50% 40.80% 40.90% 39.30%
三井ダイレクト 21.40% 20.70% 20.70% 22.80% 21.90%
SBI損保 44.00% 33.40% 26.40% 22.80% 18.60%

AXA損害保険はAXAグループの中の一社です。AXAグループは保険のイノベーションを語る際に、先進的な例として取り上げられることが多いのですが、次回「保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み」でその詳細をみていこうと思います。

なお、損害保険会社の財務諸表の見方に興味がある方は、日本損害保険協会の下記ページをご覧ください。

損害保険会社のディスクロージャー かんたんガイド

国家戦略としてのFinTechの本質と全体像

FinTechの本質と全体像を理解する上で、森・濱田松本法律事務所の増島雅和氏がStartup Innovatorsに掲載されているFinTechに関する記事がおすすめです。

概要をまとめると、以下のようになります。
  • FinTechにより、他業界(音楽、出版)でおきていた技術より、ビジネルモデルの変化、プレイヤーの変化が起きる。
  • 他業界と異なるのは、金融は産業の基盤であり国力の源泉となるので、国家戦略として規制を考えなくてはいけない。
  • 他国も自国の国力を増進させるように規制作りを進めるので、国際金融規制においてルールメイキングにおける競争がおこる。
  • 日本国内では、国内のルールメイキングを行うプレイヤーが揃いつつある。
以下、主要な記事毎のまとめです。

FinTechの正体
FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(前編)
FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(後編)

まずは、「FinTechの正体」のポイントをまとめてみます。

  • 現在おきているFinTechの潮流は、これまで音楽や出版等の他業界に与えたのと同様、該当業界以外からのイノベーターが出現し、既存の金融機関は後塵を拝しつつある。そのイノベーターはこれまでの金融機関とことなる事業モデルやサービスで競争に参入してきている。
  • 金融業というのは、リストを移転ないしは仲介するビジネスである。そのため金融商品、サービス設計にあたってリスク情報生産/管理を行うのが、そこに事務コストがかかり、商品/サービスを設計する上での制約となっている。
  • 技術の進歩により、リスク情報生産/管理を行うコストは劇的に下がっており、コスト削減だけではなく、金融商品/サービスの設計をも劇的に変えうる。
  • ユーザ/消費者が欲しいのは、ローンや保険ではなく、家/車/安全で健康の生活である。ローンや保険等の金融サービスは手段でしかない。
  • 日本国としては、他国に先駆ける形で、FinTechに関する規制改革と運用の枠組みを要し、自国の事業モデルの確立が必要。海外の金融業者が国内を席巻するという事態を招いてはならない。

続いて、「FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(前編)」のポイントをまとめみます。
  • FinTechの歴史としてはリーマンショックが起源。需要サイドとしては、リーマンショックによる金融収縮の結果、金融サービスを受けられなくなった個人、中小企業がalternativeな金融を求めるようになっていった。また供給サイドとしは、解雇された金融機関のIT部門のエンジニア達が新しいサービスを立ち上げはじめた。
  • FinTechスタートアップ会社は金融をレイヤー毎(インフラレイヤー、プラットフォームレイヤー、アプリケーションレイヤー)に捉え、それぞれのレイヤーを置き換える技術によってビジネスを進めている。
最後に、FinTechの本質と日本におけるFinTechの挑戦(後編)」のポイントです。
  • 金融は産業の基盤であり国力の源泉であるため、Google, Facebookのように国内マーケットを海外勢に席巻されるわけにはいかない。
  • 金融規制を考える際は産業全体や国益を守るために、どのように規制をしていくかという議論が必要。
  • FinTechに関し、先進諸国は自国の国力増進のために、国際金融規制において政治力を行使しようとする。国際金融規制のルールメイキングでは、お互いの国力増進のために国同士で競争が起こる。
  • 既存の規制の枠組みのなかでTry & Errorが可能になるレギュラトリーサンドボックスという手法が、現在各国当局によって試みられている。
  • FInTechの規制や枠組みを定めるために、①政府、②政治家、③金融機関、④ベンダー、⑤スタートアップといったプレイヤーが必要。
  • 金融機関では、全銀協、地銀協、証券業協会、生保協、損保協などがカウンターパートになる。