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2017年1月19日木曜日

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech

保険業界とFinTechの関わりについて、3回にわたって考えていきたいと思います。

保険業界とFinTech 1: FinTechとInsureTech
保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表
保険業界とFinTech 3: AXAグループの取り組み

今回はFinTechとInsureTechについて。保険領域におけるFinTechの動向にて、InsureTechについて説明されています。
InsurTech(Insurance×Technology)と呼ばれる新たなサービスが生まれ始めている。InsurTechは、図表に示す通り、大きく2つの形態に区分することができる。1つは、「テクノロジーに裏付けられた新たな保険商品の提供」。もう1つは「保険に関する新たな価値・経験の提供」である。
2015年頃までは「保険のDigitalization」という表現で表現されていた分野ですね。Digitalizationで議論されたいた頃よりもより注目されている分野としては、「データ分析に基づいた保険商品の提供」及び、「業務の自動化におけるAI」の役割、といったところでしょうか。マーケティングのためのバズワードとしてInsureTechと表現したくなるのもわからないのではないですが、「保険のDigitalization」という表現のままでいいのかなと思います。

 保険業界の中でも生命保険会社よりは損害保険会社がよりInsureTech/Digitalizationの影響をうけることかと思います。過去に何回か「保険におけるInsureTech/Digitalization」というセミナーに参加したことがありますが、保険の商品別でいうと、自動車保険、火災保険等住宅に関する保険、医療保険に関するものがほとんどです。

 生命保険会社としても医療保険には関わるものの、いわゆる生命保険(死亡保険)については、他商品に比べるとInsureTech/Digitalizationのインパクトは少ないかと思います。生命保険(死亡保険)の商品として特徴上、1年更新の自動車保険等と異なり、顧客(保険契約者、被保険者)とコミュニケートする回数、チャネルが少ないのが理由かと思います。

 さて、保険会社のイノベーションの度合いを「顧客が求める新しい保険会社像――顧客中心志向の保険経営とそれを支えるIT」では、事業費率を指標として考察しています。下記が該当の箇所です。
 海外では、すでにデジタル技術などを活用する保険業界のイノベーション企業が出現しています。では、日本の保険会社と海外の保険会社、そしてイノベーターとは何がどの程度異なっているのでしょうか。そこで、コンバインドレシオと呼ばれる保険会社の比較指標を見てみました。コンバインドレシオとは、事業費率(経費/保険料収入)と損害率(保険金支払い/保険料収入)を加えた値ですが、日本の保険会社はグローバル企業に比べ、事業費率が高いのが特徴です。グローバルではどこも30%未満ですが、日本だけは30%を超えています。これは、日本の保険会社における人件費の高さ、オペレーション標準化の遅れ(無駄が多い)、ITシステムの維持費の高さ、マネジメントの意識(必ずしも経営のプロではない)などに起因する部分が多いとのことです。さらに、通販チャネルを活用するイノベーターと比較すると、事業費率は10ポイント以上も差があり、何らかの手を打たねばならないとも付け加えました。
ということで損害保険会社の事業費率について次の「保険業界とFinTech 2: ダイレクト系損害保険会社の財務諸表」で取り上げます。